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おもてなしの原点

お茶を一緒にしている友人が、昔、満月を愛でながら、自宅でお茶会をした時の話をしてくれたことがありました。

この話を聞いて、私は彼女のほんの一部しか見ていなかったと猛省しましたね。

 彼女は若くしてご主人を亡くし、ご主人と暮らしていた家を手放し小さなワンルームマンションで暮らしていました。
ベッドに腰をかけ、そこから見える小さなベランダ越しの満月をじっと見ていると心が洗われると言うのです。

 ある時、お姉さんが落ち込んでいたので気分転換に自宅に誘って、簡単な食事とお茶を点てて差し上げたのです。
 ベッドの前に小さな机を置くと床に座れるのは彼女だけで、お姉さんにはベッドに腰を掛けて食事をしてもらい、月が見ごろになった頃にベランダの方へ体を方向転換して月を愛でてもらい、その間に、お菓子を準備しお茶を点てたのです。
 「お姉さんの気持ちが少しでも晴れますように」と。

 この姉妹に、月が応援しないわけがありませんよね。

 月見の茶会と聞いた私は、てっきり、すすきや秋草をたっぷりと籠に生けて、丸餅を三宝に積み上げたものを床に飾り、ご馳走を頂くお茶会を想像していました。

 このような世界観は贅沢な時間で雑誌の世界のようで、彼女がそれをしていたらとって付けた感じがありました。しかし、友人は、彼女でしか出来ない世界観を作りだし、唯一無二の茶会を催しています。

 かっこいい!って、思いましたね。

友人のお茶会は、何よりも心がある。いつもの日常に相手を思う心をそっと添えるものがあります。

 満月を見るといつも彼女を思い出します。
 おもてなしの原点は、相手を思う心が種としてありますね。

令和六年 和暦睦月 新月