少しづつ知識が増え、お点前を覚えていくうちに、まず実践したいと思ったことは、仕事というより、会社のメンバーに美味しいお茶を点てたいと思ったことでした。その大きな理由は「茶箱」があったことでした。久保先生から学んだことを、まずは、この「茶箱」を使って私流の「おもてなしの形」を実践してみようと決めました。最初は家族を相手に抹茶を点てる練習を積んでから、仲間や後輩に声をかけ、一人または数人を対象に「季節のお茶会」を開きました。「季節のお茶会」は、無機質な会社の会議室に、ささやかなしつらいをするところから始めました。時には季節の花を小さな花器にちょこんと活け、和紙、懐紙、茶碗は　数種類を準備し、好きな絵柄を選んでもらいます。和紙を下に敷き、その上に懐紙を置き、黒文字を挟んでスタンバイ。次に、菓子器に並んだ数種類の季節の主菓子の　中から、食べたいものを選んで懐紙の上にオン。「お望みなら食べ方やこの後の抹茶の飲み方を説明します」と言うと、茶道の経験がある人以外の全員が「知りたい！」と言って、聞きながら実践してパクパク。主菓子や抹茶の説明もしながら、拙いながらも心を込めて点てた薄茶を飲んでもらい、参加型の茶道体験をしていただきました。

ありがたいことに、ゆったりと流れる時間の中で、どの人も笑顔がこぼれ癒しの表情になりました。反応や感想も実に様々で、写メを撮る人、温かい言葉をくださる人、後からお礼状やプレゼントをくださる人までいて、いつも感動をもらっています。何より、普段聞けない話も聞けて、コミニュケーションが深くなったことが、お茶会を開いて最もよかったことでした。中には欧州の仲間もいて、たどたどしい私の英語でも楽しんでもらえたり、続けて数年過ぎた頃、ついに社長にもお声をかけて、同じようにお点前をしたらおかわりをしていただけたことも嬉しいことでした。「おもてなし講座」を受講してから、これまで約100人の方との間にドラマが生まれ、今もこの「季節のお茶会」は継続中です。

実践の2つ目は、久保先生から座学で学んだ知識を基に、オリジナルの資料を作成したことです。
茶道の精神やおもてなしや、茶道の基礎までを学ぶものですが、まずは、「一期一会」から始め、「四規七則」、「一座建立」、「賓主互換」…。何度口にしても新鮮で、気持ちがシャキッとします。他にも範囲を広げ、人生の主な儀礼、行事、所作の大切さの資料なども作成しています。
これまで取得した美容や健康、マナーなどにつながる資格が30を超えました。人が美しく健康であるための情報作りをしてきましたが、茶道と出会えて、更に奥が深くなったように感じ、今後ライフワークとして続け、誰かの役に立ちたいと願っています。

敷居の高かった茶道が、久保先生の考案された「おもてなし講座」のお陰で、このように私の実践に繋がりました。
これからも、私の人生の様々なシーンで、いろいろな方と笑顔のある幸せな時間を重ねていけたらと思っています。
「おもてなし講座」という素晴らしいシステムを構築され、茶道の素晴らしさとおもてなしのこころを形にすることを教えてくださった
久保先生に、深く感謝しています。

二の段を受講していた頃でしょうか。社長との定期的な面談の場で、日頃の感謝の気持ちを一服のお茶とともに表したいという想いが自然と湧いてきました。季節の趣向にあった茶碗やお菓子を準備し、少しでも和やかな時間を共にしたいとの思いをこめてお茶を一服差し上げました。当時の社長は難しい判断を迫られていて、心身ともに大変な時を過ごされていたところ一杯のお茶に救われたと、後になって打ち明けてくださいました。 おもてなし講座を受講していなければ、忙しい時間を割いていただくのは申し訳ないという考えを優先してしまい、社長にお茶を一服差し上げたいという気持ちになってはいなかったと思います。講座で学んだ「一座建立」の精神を、日々の暮らしのなかで自然に取り入れられるようになったことは、これからの私の人生にとって大切な財産となりました。 その面談はちょうど桜が満開になる頃のことでした。今でも桜の季節になると、その時の社長の嬉しそうな表情や和やかな場の雰囲気が思い出されます。